妊娠中の不調でも、約60%もの妊婦が経験するという「腰痛」。
産後にも腰痛に悩んでいる人も少なくありません。妊娠中の腰痛が続いている場合もあれば、産後に初めて経験する場合もあります。
今回は産後の腰痛について解説していきます。
産後の腰痛の原因
産後の腰痛の原因について説明します。安静時や特定の動作時以外にも強く痛む場合には、婦人科や整形外科などでみてもらう必要があるので注意してください。
・骨盤輪不安定によるもの
妊娠中に分泌されるホルモンによって骨盤はゆるみます。骨盤周囲の筋肉や靭帯を弛緩させる作用をもつリラキシンというホルモンが有名です。
骨盤は3つの骨から構成されますが、それぞれを繋ぐ関節の動きは妊娠最終月~産後3週で32~68%も大きくなるといわれています。
骨盤は体を支える重要な部位なので、骨盤がゆるんでいると体を支えきれずに負担がかかり腰痛にもつながってきます。
・姿勢性腰痛
<妊娠に伴う姿勢変化>
胎児が大きくなっていくにつれて、姿勢は変化していきます。多いといわれるのが、股関節が前に突き出すような姿勢です。
本来、背骨(頸椎、胸椎、腰椎)は横からみるとS字をしており腰椎は緩やかに反っていいます。しかし妊娠中に多い不良姿勢では、腰椎が平らであったり、反りすぎていたりして腰痛原因になっています。
妊娠中は腹筋が引き延ばされ、薄く働きにくくなっているので、腰にかかる負担は大きいです。さらにこうした不良姿勢では過剰に腰の筋肉を使うので、腰の筋筋膜性の痛みに繋がりやすくなります。また腰椎そのものの痛みを引きおこす場合もあります。
産後も引き延ばされた腹筋はすぐには戻りません。そのため、妊娠中の姿勢や動作パターンが直らず、腰に負担が大きいままになっていきます。
産後は日々体重が増えていく赤ちゃんを持ち上げる動作が多くなるので、腰への負担も大きくなってしまいます。
<育児動作による左右非対称>
産後は、授乳や抱っこ、沐浴などさまざまな場面で腰に負担のかかる動作があります。中腰姿勢や、背中を丸めたまま長時間になる姿勢が多く、腰や背中の筋肉への負担は大きくなります。
非対称な姿勢も腰痛の原因になります。片手で赤ちゃんの頭頚部を支える姿勢や、抱っこしたまま何かをする際に骨盤に赤ちゃんを乗せるような姿勢は、左右どちらかの腰に負担が大きくなり腰痛に繋がりやすいです。
・心因性
腰痛は精神的な問題とも関係が深いとされています。産後は急激なホルモンバランスの変化と、環境の変化や慣れない育児が重なり、産後うつなどもなりやすい時期です。このようなストレスから、腰痛に繋がることも考えられます。
動作や姿勢を見直して腰痛改善を目指そう
産後は出産によって傷ついた体が回復する大切な時期です。過剰な筋力トレーニングやストレッチは負担が大きくなってしまうのでやめましょう。
忙しい産後の生活で、エクササイズを取り入れるのはなかなか難しいものです。まずは日常生活での動作や姿勢を見直してみることが大切です。
以下のことに気をつけてみましょう。
・骨盤ベルトの活用
・床に座るときはあぐら
・タオルやクッションを利用して授乳姿勢を見直す
・沐浴やおむつ換えの高さを見直す
・左右どちらかに偏った抱っこをしない
・できるだけ胸の高さで抱っこする
「くわの森整骨院」では、産後ママに向けた施術も行っています。優しい矯正で、産後のデリケートな時期にも安心して通っていただけます。
ひどくなる前の適切な対処が大切です。腰痛でお悩みの方はぜひご相談ください。
“参考文献:
「妊産婦に対するウィメンズヘルス理学療法 著)平元奈津子 理学療法の臨床と研究2018」
「産褥期の腰痛に関する研究 著)中津貴代,高室典子,山中正紀,良村貞子 看護総合科学研究会誌2006」
「産前産後の女性のためのエクササイズガイドライン 著)Michele Dell Pruett, Jennifer L. Caputo NSCA JAPAN2012」
「理学療法士のためのウィメンズ・ヘルス運動療法 監)上杉雅之 医歯薬出版2017」
「ウィメンズヘルスリハビリテーション 編)ウィメンズヘルス理学療法研究会 MEDICAL VIEW2014」